ホワイトアウト
銀猫

軋む
一歩ごと
軋む
心ごと

逃げ込んだ森は
甘美な瀞が満ち
わたしは愛しい景色を
凍る爪先で犯してゆく


痛む
一言ごと
傷む
一夜ごと

明日を司る月が
昨日に向かって隠れ
白くなったきみの顔が
左目から歪んで落ちる


終焉を飾る感情は
悲しみでなく
憎しみでなく
ただ
虚無の白であるものだ


これまで
明日が探せたのは
なぜだったろう

きみの名前を声にすると
視界にぽつりと光が灯る


戻れない道を
辿りながら
ひどく白を思い

わたしは眠りに恋がれ
うたといううたを
全て破り捨てた


ホワイトアウト


静寂の誘いと
まだ熱い振幅を繰り返す心臓との
奇妙な狭間で


わたしは
残る体温を雪に埋め
獣の足跡のような
証拠が消えるのを
眠って待つのだ


約束事はすべて反古だ




自由詩 ホワイトアウト Copyright 銀猫 2005-12-18 00:48:49
notebook Home 戻る