夕焼けが足りない 14
AB(なかほど)

赤ペンさんのバイトをしていた頃のこと
その日は小学校三年だか四年生の国語のテスト
の丸つけをしていた

    いつものように今日もけんちゃんとけんかをして
    しまったわたしは、秋の河原で飛びかうトンボを
    眺め、「けんちゃんなんかきらい」と言いながら、
    さびしくなってしまった。トンボみたいにいくつ
    もの目があればいいなあ、、
とか、なんとかの文章を読ませ
問題は

    「わたし」はどんな気持ちになったのでしょうか
というもの
もちろん

    さびしい気持ち
という答えに丸をつける
そんな、ほんの一瞬の繰り返しの中

    トンボになった気持ち
と汚い文字の答え
おそらくずいぶんと丸まった鉛筆で
そのときは思いきり

      ×
としたのだけれど
「わたし」は

    さびしい
よりももっと混ぜこぜな気持ちで
それは

    トンボになった気持ち
だったのかもしれない
と今では思う
その「わたし」になりきった子は

    トンボになった
ほどに
どんなにかさびしくなってしまったんだろう





未詩・独白 夕焼けが足りない 14 Copyright AB(なかほど) 2005-12-16 13:42:19
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