子犬のワルツ
千月 話子

玄関先で可愛く鳴いた
多分 白い綿毛の小さなワルツ


昨日の残りの納豆巻きを手でわし掴み
走って探した 
陽だまりの道


僕が好きなものを キミも好きだと思ってた
テーブル越しの 争奪戦


自転車の前かご 
でこぼこ道で一緒に弾んだ
進んで行く飛行機雲を追いかけて
緑の公園まで




春の花咲く庭先で優しく鳴いた
きっと 白い綿毛の踊るワルツ


ポツンポツンと歯型の付いた
ピンクのボールをわし掴み
高く放った
キミの場所へ


僕のやる事を キミもやってみたいと思ってた 
半円を描きキャッチボール
陽が沈むまで


空気の抜けたタイヤ
空気の抜けたボール
空気の漏れる前歯
キミを呼ぶ


足跡は まだ
目に付くところ
はっきり残っているので 探すよ
キミの白い面影 ふわふわ


僕と座ろう 背もたれのワルツ
僕と遊ぼう 白いクレヨンのワルツ
僕と眠ろう 羽枕のワルツ
ポケットの中にビスケット入れて
時々は 夢の中で




窓を少し開けておく 朝
風が丸く固まって
靴下を履く僕のそばで
じゃれるように遊んでる


足元で右回りする
子犬の ワルツ


いつも一緒
いつでも一緒。






自由詩 子犬のワルツ Copyright 千月 話子 2005-12-15 22:56:29
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