嘘吐き詩の人
虹村 凌


俺の為に余命三ヶ月になってくれないか?
そして或る日突然に
そう突然に死んでくれないか?

嘘だ

戦争や争い事なんて少ない方がいい
無くなりはしない事はわかっている
家族や友人を殺されたって死刑反対と言える程
聖人になりきれない中途半端な平和論者さ

だから俺の為に余命三ヶ月になってくれないか?
血を吐きながら笑顔を煙草を吸っておくれ
青い顔で珈琲を飲んでおくれ
泣きながらケーキを食べておくれ
痩せ細ったその身体で三ヶ月を生きておくれ

嘘だ

100億の嘘さえ本当にならないような世界では
犯罪の方が儲かる事だって無いんだろう
そんな世界は望んでいない
お前等が居なくなったら俺は何処に行けば良いんだ?
ねぇ聞いているの?

たかだか俺が書くクソみてぇな詩の為に
余命三ヶ月になってはくれないだろうか?
血を吐きながら「一緒に死んで呉れないか?」と
脂汗を浮かべながら「大した事は無い」と
血の気の無い顔で「早く帰れよ」と
言ってはくれないだろうか?
たかが俺の為に たかが俺の為に

嘘だ
お前等がいなくなったら 俺は満足に煙草も吸えないよ
だけど少しだけ そんな事を望む俺に
何も言わないでいてくれ


自由詩 嘘吐き詩の人 Copyright 虹村 凌 2005-12-14 09:50:46
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