禁色の人
ヤギ

私はあんなに憎い人を知らない
穏やかに過ごしていた日々を
圧倒的な力で根こそぎ運びさり
最もうとんだ葛藤と労苦の
深くにごった河へ流し込んでしまった

こんなところで生きてゆけない

満身の力をふりしぼり息も絶え絶えにぬけだす
不思議なことに果てに残るものはいつくしみだった
それは柔らかく清らかで私の土から生えた若草だった
だからまた、その一つかみの花束を手に
ずぶずぶと戻ってしまう
父と母のいたあの河へ
後悔と絶望といたわりのもたらす希望とを何度も何度もくり返す
私は馬鹿になってしまった



雨は全てのはじまりという
幾万の雨滴が寄り集まって川となり
川は海へ注ぎ
海は雲となり
雲はまた雨を降らす
つまり雨は全てのおわりでもあるということだ
いや、それも正しくない
断片なのだ
雨も川も海も雲も
はじまりとおわりの永遠のくり返し
その断片なのだ



あの恐ろしいうねりの真上にすっくと立つ

☆☆☆ サーフィン! ☆☆☆

(はぁ)
あんなふうに、とあこがれます
まぶしい太陽の下
じりじりと身を焼かれながら
次々と寄せる波に
さっそうと乗ってしまう
あんなふうに、と



私の子は
馬鹿とののしられても
卑しいとさげすまれても
かえって力強く生きる
決して捨てず
あきらめず
みだらによどんだ沼に住む
醜くゆがんだ魚のように
力強く生きる
そのように名をつけました
だから



お願いです




自由詩 禁色の人 Copyright ヤギ 2005-12-12 13:58:44
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