おっぱい
大覚アキラ

おっぱいが道端に落ちていた
薄桃色の滑らかな円錐形のおっぱい
こんなところにいったい誰がこんなものを
名前でも書いていないか拾い上げて調べてみる

きめ細かい柔らかな肌
乳首は透明感のあるピンク色で
弾力のあるその触り心地から推定すると
おそらく持ち主は10代後半だろうか

裏を見ると滲んだサインペンの
へたくそな字で「カツヒロ」と書いてある
ということはこのおっぱいは
カツヒロという男の彼女のものなのだろうか

とりあえずおっぱいを持って歩き始めたのだが
ふと嫌な考えが頭をよぎった
こんなもの持って帰ったら家庭不和の火種になるぞ
どうしようどうしようどうしようどうしよう

けっきょく色々と悩んだあげく
カツヒロの彼女のものと思われるおっぱいは
地下鉄のホームのゴミ箱に捨てた
少しだけ捨ててしまうのが惜しい気がした


自由詩 おっぱい Copyright 大覚アキラ 2005-12-04 17:29:59
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