きみと別れると決めた夜の覚え書き
窪ワタル

夜を忘れたら月は太陽になるかしらと君
かしら 凛とした語気が受話器の楕円に沿ってひびく
夫婦なんて空気みたいなものらしいよ
の 君からの応答 螺旋を逆に辿るために
どんな言い訳もオヨビデナイ のだ

(携帯でなら軽いんだろな)

時代錯誤な塩化ビニールが鬼気に満ちている午前二時
溜息を殺した喉仏では気の利いた別れ話の泡が破裂してはまた膨らむ

(さよならだけが人生だ)

愛してる と口に出す時の後ろめたさはたぶん本能と理性とが表裏ではないと気付くからだ
欺瞞だからセックスできる 射精して直ぐ眠くなるのはジェンダー論の嘘を証明する弁証法 (猿モノは負わず 繰るものは拒めない 人類普遍の真理)男は勃起しなければ直立していられないのだ とする仮説を立てて詭弁を容易におもい付いてしまう 言葉は罪だ

(アイシテイル)








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注)「話者=作者」或いは「作品=作者の思想」とおもわれる方は無視して下さい
  
 
 


自由詩 きみと別れると決めた夜の覚え書き Copyright 窪ワタル 2005-11-18 02:02:48
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