冬蝉
窪ワタル

午後の輪郭をなぞる
コーヒーの湯気は婀娜っぽい
ブラックはもう飲めない
この頃は結婚式に呼ばれてばかりだから

フレッシュを二つ入注ぐ
深いマグカップに沈み混んで
滑って 昇ってくるのを待つ
寝ぼけた光の欠片
一瞬 蝉の抜け殻の色に似ている

指の腹 形而上的にしか温みはない
砂糖もシロップもなし
憶えたての味 自尊心 ぎりぎり
消さないで
退廃までの距離 無視して啜る

待ち侘びる声も 言葉も
届かないのだ

苦味ばかり舌に絡む

祈りなんて信じていないくせに
身を硬くして丸まっている




自由詩 冬蝉 Copyright 窪ワタル 2005-11-14 13:55:35縦
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