願望充足2
佐々宝砂

しらじらと明るい午後二時の浜辺
空はうんざりするほど晴れ渡り
こんちくしょー嘘だろと思うくらい雲ひとつなく
砂は一粒一粒がそれ自身の光を放ち
そのくせどれもが真っ白で
海の彼方ににじむのは伊豆半島で
(このあたり唐突にローカル)
つまりここは東海の小島の磯の白波きらきら
蟹はいないようだが
潮だまりにはグロテスクな魚?
魚だろうか魚かな魚とは思えないような
なんだかわからないがまあ
潮だまりにはなんやら得たいの知れないイキモノ
紫色の鱗に銀の鰓なめらかな尾はショッキングピンク
盲いているらしき目からはどすぐろい液体が流れ落ち
半ば開いた口からこぼれる茶色く汚れた牙と
知性の明らかな証拠であるコトバ
そしてそのコトバはみずからの醜さを罵り罵り
しかしその派手な尾が水を打てば
繊細な、繊細な、美しい、妙なるメロディが響きわたる

そのメロディが
わたしはほしい


自由詩 願望充足2 Copyright 佐々宝砂 2005-11-06 02:43:55
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