黒い悪魔
虹村 凌

テオティワカンからアンコールワットまで
ニューヨークからカイロまで
世界中の交差点が赤信号で
イライラしたSOSが飛び交い続ける

スパンコールの雨が降ってきて
体中傷だらけになって
ミラーボールみたいな月が落ちてきて
頭は半分潰れちまった

プルルェッ!

携帯電話のボタンの隙間から
真っ黒い悪魔がこっちを見ている
真っ赤な目と真っ赤な舌
真っ黒い悪魔がこっちを見ている

緊急事態の全校集会
ステージの上で爆裂死
手首を掻き切って消火活動
真っ黒い悪魔が笑い転げる

プルルェッ!プルルェッ!

ベッドの下の隙間から
女達がこっちを見ている
手に手にナイフやマシンガン
休まることの無い睡眠時間

ぼろぼろに殺される夢を見て
目が覚めたと思えば
本当に胃に穴があいていた
腐った肉の匂いがするよ

プルルェッ!

空の上から愛の鐘を鳴らし続けて
全ての詩人が死に絶えるのを願った
全ての歌い手が死に絶えるのを願った
全ての幸福が手に入ることを願った
高慢なヒロイズムが死に絶えるのを願った
寂しい夜が蒸発するのを願った

そうして俺は何処にも行く場所がなくなって
携帯のボタンの隙間に身を潜めるんだ


自由詩 黒い悪魔 Copyright 虹村 凌 2005-10-27 03:50:12
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