じゅわり
イオ



その指先がこの涙をぬぐうことは
もうないのだ、と
うすうすは わかっていたよ

その手がこの手を握ることは
もうないのだ、と
うすうすは 気づいてはいたよ

その腕がこの体を抱きしめることは
もうないのだ、と
本当は 知っていたよ

じゅわり、と音がする

私は悲しみをひたひたに
吸い込んだスポンジだよ

ほら
その冷たい指先で
押してみろ
音がするだろう
じゅわり、と
悲しみが滲み出る

ほら
その冷たい手で
ほほをはたいてみろ

ほら
その冷たい腕で
私を振り払ってみろ

私は何をされても
ただ
じゅわり、と
滲み出てくるものに
身を任せているだけだよ

ほら
その冷たい指先で
押してみろ

音がするだろう
じゅわり、と







自由詩 じゅわり Copyright イオ 2005-10-27 01:27:17
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