Sugar raised ver.3.0
なを

わたしたち砂にまみれた膝をいとおしむ
わたしたち砂にまみれた膝をいとおしむ
わたしたち砂にまみれた膝をいとおしむ
これは骨のかけら
それとも砂糖つぶ

はちみつのようにとろりと濃い夜が明ける


そして
すべての青空のしたのありとあらゆる屋上で
わたしはわたしのうつくしいひとを抱く
ゆっくりした音楽ででたらめなステップをふむ
うつくしいひとの腰を抱く
オレンジジュースのストローをやわらかく噛む

うつくしいひとを抱く
砂にまみれた膝とスカートを
ゆっくりと払う砂粒 
砂糖のかかったドーナツ
うつくしいひとの唇に砂糖つぶ 



この場所は髪を切った女の子のようにとてもあかるい
この場所は髪を切った女の子のようにとてもあかるい
この世界は髪を切った女の子のようにとてもあかるい

気がつくと真昼はいつでもあたらしい
菓子パンの袋を剥くようにして

ありふれた味のあまいパンをひざにこぼして
バスのいちばんうしろのシートで
あんなふうにおおげさに手を振ってごめんなさい


かわいた草むらをかきわけて歩きながら、
甘いパンをわけあって食べる。
ふくらんだあなたの頬をながめていると
わたしたち死ななくてもいいのかもしれない、
だれかから許してもらったみたいな気ぶんになる。


草むらがとぎれて砂におおわれた道へ出る。


ゆびのやわらかいところでもっとやわらかいところを撫でる。
パンくずをはらいのける。無心に。
あさはかなわたしたちのお祈りはパンくずのようで
歩くうしろに鳩が群れる。


ふりかえりふりかえり、あなたは笑う。
無心に。
わたしたちもしかして死ななくてもいいのかもしれない。
あなたと甘いパンをわけあって食べる。
パンくずをはらいのける。


これがお祈り。


孤独をかたちづくる砂つぶが洗われて
さみしいきもちの
芯があらわれるのをうっとりと眺める

きれいな膝をした親切な娘たち
ひざまづくことを知らない娘たち
寒い海辺
遠くでひかる黄色いブイ

光がただ匂うようだ。


はんそでのシャツのうつくしいひとは
フェンスにしがみついて夏薔薇に似ていて
はんそでにはまだはやい薔薇の季節にはまだ
すこしはやい
あなたはいつもいそぎすぎだ
雨はまだ降らないからどうかゆっくりあるいて


わたしの骨はあなたの骨は
わたしたちの骨は
砂糖菓子のようにやわやわともろい
だからかんたんに水にとける
走ったら壊れる
走らないで


かなしみにすらふさがれないわたしの空洞に
ましていとおしさなど
砂糖つぶのようで


とても甘い

誰かのへたくそなギター
雨と雷と虹
ひかり満ちる午後の電車
屋上のラジオ
割れたレコード
バナナケーキをきりわけるナイフ
Happy birthday song
ゆびとうでと肩
汗のにおい
まぶたのうらの蝶々


はためく青いシャツと
ことばにできない、ということばしか捧げられないくらい
うつくしい微笑み
に、砂糖のように砂がまみれる


わたしたち砂にまみれた膝をいとおしむ
わたしたち砂にまみれた膝をいとおしむ
わたしたち砂にまみれた膝をいとおしむ
これは砂糖つぶ
それとも骨のかけら


はしらないで。


自由詩 Sugar raised ver.3.0 Copyright なを 2005-10-25 13:59:39
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