女学生のホワイトソース和え
虹村 凌

真っ白いドレッシングに塗れた女学生を目の前にして
ただただ震えるだけの手と
笑い続ける膝を引きずって
部屋を出て行くのが精一杯だったんだよ

 ようやく心に平穏が戻って
 変に奇をてらう事も少なくなった
 なのに手が震えるのは
 今は敵がいないからかしらん?

部屋を出てドアを閉めて煙草を吸って吐いて吸って吐いて
ただただ早鳴る心臓と
笑い続ける乾いた声を殺して
へたり込むんで一日が終わってしまったんだよ

 笑わないで聞いてくれ
 今でも俺の心を締め付けているのは
 お前の大切にしてたハムスターを殺しちまったんじゃないかって事だよ
 相当に歳のいってた老いぼれハムスターのセレナーデ
 俺の指に噛み付いて思わず落としちまった
 その三日後に死んだんだよな
 今でもずっと言えずにいるんだ
 お前は命の恩人だからね

世界は配色を変え始め
雨に打たれて木の葉が降ってくる
錆付いたドアの向こうに
女学生のホワイトソース和え


自由詩 女学生のホワイトソース和え Copyright 虹村 凌 2005-10-24 13:37:53
notebook Home 戻る  過去 未来