赤 (に)
容子

金魚の尻尾を
一匹ずつ
親指と人差し指とで
摘まんで
西の空へかざして
流れる空に赤を重ね見た

どうでもいいような思い出が
西の空へ吸い込まれ行く金魚の
開いたり閉じたり
開いたり閉じたり

繰り返す口元から
吐き出されるものだから
開いたり閉じたり
開いたり閉じたり

薄くなる空気に
わたしの口までつられ動く

繰り返し動く口元から
音のない声が
西の空へ吸い込まれ
摘ままれている金魚は
それが口に入り込むたび
びちびち

せわしなく動き
やがて
赤みを増して
空の西へ吸い込まれる





自由詩 赤 (に) Copyright 容子 2005-10-23 22:44:55縦
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