屋上の巨木
チアーヌ

3階建ての小さなおうちの
屋上にはたくさんの巨木
桜、こぶし、メタセコイア
もうすでに巨木
ねえいつか潰れてしまうよ
そのいつかは今かもしれないよ
中に入れば階段は細く長く
途中にはたくさんの人、人、人
お茶を飲んでは注ぎ飲んでは注ぎ
胃袋は今にも破裂しそう
トイレはいつも満杯
いつ逆流するかな
屋上に上れば巨木が健やかに
風に葉を揺らす
秋空はあくまでも高く
桜の木に鳥が巣を作り
こぶしの根元にはカブトムシの卵が産み付けられ
メタセコイアは30メートルもの高さまで成長し
まだまだこれから
わたしは眩暈がする
後ろから奥さんがにこやかに近づいてくる
変わりない笑顔で
「大丈夫です、それらは全部イミテーションなんです」
「そうなんですか、良く出来ていますね」
「ホームセンターで全部買って来ました、素敵でしょう」
「ホームセンターで」
わたしはもう一度梢を見上げる
巨木は悠久の時間を刻んでいる


自由詩 屋上の巨木 Copyright チアーヌ 2005-10-07 16:38:19
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