午後のリビングでのリアル
チアーヌ

心地よい風が吹き
国道近くの喫茶店は
おしゃべりで満たされてる
空気みたいだった
あなたとの時間は
あのあと一年くらい
続いたのだったかな
だからそう
まだ大丈夫
とてもリアルにあのときのココアのカップの模様や
カウンターにおいてあったコーヒーミルの形
電灯の傘
丸太で出来た椅子
の上に置いてあったクッションの模様
隣のカップルがしゃべっていた内容まで
わたしが覚えているのは
どうしてなんだろうな
このまま追憶を続けてなんかいたら
あなたとの別れの場面までリアルに
思い出してしまいそう
あのときの車のダッシュボード
流れていた音楽
あなたが捨てた煙草の吸殻の形
ネズミ捕り警報機
今はもうない缶コーヒーが二つ
あなたのつけていたコロンの香り
あなたの指の形
そして爪の形
わたしはうんざりしつつ悲しくて
わたしがこんなにうんざりしちゃったのは
わたしのせいだけじゃないはずなのに
別れを言い出す羽目になったその原因はわたしが
他に男を作ったからで
やっぱり一方的にわたしが悪いみたいで
それでも
わたしはあなたと別れることが寂しかった
そういう自分勝手な話
でも最後にキスを迫られたとき
全身で拒否しちゃって
あなたは泣いたんだっけ
9つも年上のあなたが泣くなんて
わたしは思ってもみなかったの
恋の終わりなんて
当然残酷なものだから
そう
だからそんなことを
手に取るようにリアルに
思い出す前に
追憶はやめたいの
あなたとは
秋が深まった頃国道沿いの喫茶店で
ココアを飲んだときのまま
その一年後のことなんか
思い出したりしないで





自由詩 午後のリビングでのリアル Copyright チアーヌ 2005-10-02 20:38:50
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