鳴き始める
石川和広

夕暮れ
絶望は希望の反対語ではなく
生きている私の
不安の影がついてくる

彼女は飲み会に行ってしまった

虫たちに話しかけようとするが
虫たちは鳴いていない
犬も鳴いていない
葉が風に揺れている
焦りの加速度は増す

僕の重心がとれない
詩集を出した後なにができるのか

身支度を整える
風と戦う
あっと言う間に
日が暮れる

ヒュー

助けてくれ
なにが
助けてくれ
なにを

胸が痛い
はるか宇宙はカラス鳴く
鳴き始める

カラス
カラスよ
僕に安心をください

歌がでない
しぼりだすように
孤独の歌を歌う

お手紙届きましたか
もう夜です
ただそっと抱いてほしいのです
また星が死ぬのです
職安はいやです
夢はなんですか
聞かれたくありません
僕が羽ばたける場所はどこでしょうか
こうして書き続けることでしょうか
月がやって来ます
うすぐもりです
少しだけ近寄ってください
あいたいです
壁があります
しかし
少しだけでもいいのです
雨は降らないでしょうか
今日は運動会でした
あいたいです

夜は迫ってくる
少し落ち着きはじめたように


自由詩 鳴き始める Copyright 石川和広 2005-10-02 17:53:53
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