昼のあいさつ
石川和広

抜き打ちに
昼が訪れて
僕は
誰にともなく
やあどうもというが
答えは空っぽの家に
自転車のブレーキの音が
キュウキー響くだけで
僕はためいきをひとつついた

昼はおとなしくしている
あまり何もできない
夜光虫みたいだ

昨日の晩はミステリーを
読み終わった
せつない話でもあった
何か励まされた
人のこころは砕け散った宇宙みたいだと
多重人格の人の言葉を読みながら
少し荒っぽく息をふせた

僕と僕自身の通路が
うまくとおりぬけられない
と医師にいったら
もっと具体的にといった
カウンセリングでの
やりとりをはなしたら
それはカウンセリングで
といわれた
さみしかった
そうかここは病院なんだよ

こうかいていると
鳥の羽ばたく音が聞こえた
きっと
昼のあいさつかもしれない
そう
思った


自由詩 昼のあいさつ Copyright 石川和広 2005-09-30 14:35:38
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