氷が笑えば水は俯く
千波 一也

窓越しのアルデバラン

暖炉が背中でうたうなら
ベテルギウスは指輪にかわる

ポタージュの香り満ちる星座紀行は
甘くも、はかない



やがて旅人は
アンドロメダへの郷愁にかられてゆくだろう
雪原は手招きをするだろう



吐く息の白さは
束の間だけ美しい
水のいのちが凍れるさまだ、と
浅はかさを知るのは数分の後




ダイアモンドダストの煌めきは天使の誘い
有無を言わさず連れ去ろうとする
天使の誘い

砂時計をこころに留めておかなければ
水のいのちは
砕け散る
それはそれは鮮やかに
砕け散る



毛糸の暖かさに包まれながら冷めてゆく夢を
一角獣座は
鋭く見つめることだろう




氷が笑えば水は俯く

手の温もりは
誰にも届かず消えてゆく


氷が笑えば水は俯く

北極星はいつも
旅人のために明るいのだが





自由詩 氷が笑えば水は俯く Copyright 千波 一也 2005-09-29 07:49:08縦
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