蝶々連鎖
千月 話子

草むらを分け入ると
シジミチョウの群れが一斉に飛び出した
散りじりに空へ舞い上がる
小さな薄紫の花びらよ
先を行く 私の体にまとわり付いて
軽くなる体 ここは、春の国?
頬に触れる一匹の モンシロチョウが
木陰を廻り 夏の隙間に消えて行く



消えて行く あやふやな隙間から
夜のモーター音 夏の風
つい昨日の事だった それよ
ああ、、喉が渇いた、、
干乾びる前に気付く
爪先で 木陰の湿度



昨日から 窓を閉じた。
湿度示す 黄色の
系を包む塩化ビニール
しゃりしゃり と触れる音
乾ききらない、まだ編まない
そうして 形作られることのない柔らな糸
からからと 冬の音よ
巻きつくな。 私の体に
永遠に閉じ込めておく 冷たい湿度計



閉じ込められた冷たい水がまだ必要です。
午後零時に白い扉を開けて 取り出す・・
事のできなかった 夏が
後ろ側で唸っているので
冷凍室の扉を 開けた
ぱらぱらと降る白い雪 湿っていく部屋
かき集めて かき集めて 
一分 温めた。
焦げ臭い匂いが広がってゆく
温めすぎた それが膨張して
扉を押し広げる瞬間を見てください。

固まった黒アゲハチョウ の群れ
一斉に飛び出して
わずか六畳の部屋 一杯に
ひらひらと 舞い上がる
今夜ひと晩 その暖かい羽根布団に包まれ
眠らせてください。 眠らせて、、ください。



眠っていた草の上
シジミチョウがまとわり付いて
柔らかい風 空は高く
雲の右側と左側では 少しずつ形が違う
上空を一匹のトンボが 飛び行くのだ。

靴ひもの 蝶結びがほどけて
夏は アゲハチョウと行ってしまった。
あの 草むらから・・・






自由詩 蝶々連鎖 Copyright 千月 話子 2005-09-27 22:52:13
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