雨について
簑田伶子

シーン1


男の子が「つみき」という名札をつけていた
私が
つみきっていうの?
ときくと
そうだよ、かっこいいだろ、建築って意味
というのだ
へーんな名前
というと
男の子はむっとして
お前の方がへんな名前だろっ
という
私がいそいで自分の名札をみると
私の名前は「雨」だった

おかしな夢だ
目を覚ます前に思った




シーン2


押入れの整理をしていたら
7歳のときに書いた詩が出てきた

「雨の音」

空から雨がふってきた。
かさをさした。
ぽつんぽつんと音がなった。
音がどんどん大きくなった。
ダンスをしている。
また雨の日にでかけたい
なあ。


傘をささずに
雨の中へ飛び出すことができたのは
14歳になってからだった




シーン3


雨が降っている
この家はいつだって静かだ

あれはいくつのときだったか
あなたはとても恵まれているのよ
と母に言われたことを急に思い出して
目の前の母が
今はかなしいのだ

窓の外の雨は強くなる
いや
本当は最初から強かったのだろう


泣かないので
私はいつも
雨に
なりたかったのだ



自由詩 雨について Copyright 簑田伶子 2005-09-19 12:06:21
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