『サクラサエ』
川村 透

 世界は一滴ずつ変わってゆく。



--甘い雨の
 甘い糖衣、クスリを齧りながら深夜に
 問いかける

かわいたコトバの息苦しさ
まちがっていたのは、きっと僕の方だ
ハイイロの香りよ、香ばしい二人の箸で
カナリヤの粒子よ、君のカケラ
サクラ
サクラ
サクラ、サク。



--甘い夏の
 甘・NUTS、果実を皮ごと貪りながら雨に
 汚される

ぬれたシャツのみずみずしさ
まちがっていたのは、きっと君の方だ
ハイイロの香りよ、香ばしい二人の箸で
カナリヤの粒子よ、君のカケラ
サクラ
サクラ
サクラ、サケ。


--甘い息の
 甘やかな匂いに、くちびる、むせびながら緑を
 超えてゆけ

かわいた骨、のあたたかさ
まちがっているのは、君も僕も同じだ
ハイイロの香りよ、香ばしい二人の箸で
カナリヤの粒子よ、君のカケラ
サクラ
サクラ
サクラ、マエ。



--甘い髪の
 甘い髪飾り、杏を噛み締めながら写真に
 話しかける

かわいた明かりのよそよそしさ
まちがっているのは、きっと世界、の方だ
ハイイロの香りよ、香ばしい二人の箸で
カナリヤの粒子よ、君のカケラ
サクラ
サクラ
サクラ、サエ。


サクラサエ

生きて
いたら。



 世界は一滴ずつ変わってゆく
 世界は一滴ずつ変わってゆく



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■2005/8/31 Sakura Nakamura/ 享年 20才 /事故 /ASAMAMICHI
【BGM】「SAKURAドロップス」宇多田ヒカル


自由詩 『サクラサエ』 Copyright 川村 透 2005-09-14 00:30:58
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