夜空の幻灯機
たりぽん(大理 奔)

微かな水滴が
雨の存在を地上に示す

磁力線に沿わず自由な思想で
舞い落ちる雨粒は
落下する意思そのもの

季節の移りを告げてまわる風が
鈍色の雲を次の季節に追いやり

残り火がわずかな時間
雷を深紅に焦がして今日が死ぬ

夜が明日にむかって
星時計をまわし
夏を惜しむ名残の雲が
もう少しもう少しと
それを真っ黒く覆い隠すので

僕は、幼い頃に盗んで
隠してあった
星の幻灯機を
高原の聖火台に運び上げ
未練がましい雨雲たちの天井に
かりそめの星座を投影して
季節の水時計を
運行する

自転と別の軸の自由な思想で
回転する銀河群は
時を移す意思そのもの

季節の移りを告げてまわる
星座がたくさんの想いを映し
雲のスクリーンの切れ目
遠い暗黒から

流星が微かに頬の水滴を照らす








自由詩 夜空の幻灯機 Copyright たりぽん(大理 奔) 2005-09-13 22:43:38
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
私的星座盤