塑像
白糸雅樹

変動を予見する者微熱持ちひとはひそかに囁き交わす 

自爆テロ現場に残る指先の紅あざやかに風を掴みぬ

メッセージカードいちまい落ちている楽屋にランプシェードの黄色

柔弱でありつづけること難しく防衛法案じわじわと来る

自らの精神の根に穴うがつどこまでゆけるのかは知らないが 

いまだ見ぬ風紋描く言の葉を弄ういらう手の不確かさを以って

横たわる詩人に砂を投げ入れよテロリストのかなしみ知らぬなら

わたくしよ先輩詩人の言説のはしからこぼれる米粒であれ

       
初出:かばん2005年9月号


短歌 塑像 Copyright 白糸雅樹 2005-09-12 22:52:31縦
notebook Home 戻る  過去 未来