秋桜忌
落合朱美


あの子は逝ってしまったのよ
夏の名残の陽射しが注ぐ朝の庭で

何度か苦しそうに喘いで
だけどそのうち眠るように
少しづつ少しづつ
呼吸が弱くなって

愛するみんなが見守る中で
頑張ったけど頑張ったけど
とうとう力尽きて
それは静かな最期だった

おとなしくてわがままも言わず
控えめなあの子らしい
静かな静かな最期だった

必死で呼びかけた私たちは
為す術もなくて
あの子の桃色の舌が
真っ白に変わり果てるのを
ただ見ているしかなかった

あの子は逝ってしまったのよ
こすもすの花が咲き始めた朝の庭で




自由詩 秋桜忌 Copyright 落合朱美 2005-09-10 15:09:04縦
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