田舎道
落合朱美


ぽくぽくと砂埃の道を
踵の低い靴で歩く
道端にときおり現れる
柿の木の下で
風に吹かれて和みながら

寂れた雑貨店は
小さなオアシスのように見えた
冷蔵ケースのコーラの瓶の
くびれたウエストが
なぜか可笑しかった

畦道の向こうに
すこし朽ちた墓石たちが
寄り添っているのが
この村の縮図みたいで
笑みが零れた

父が生まれたこの村に
今年は私が一人で帰ってきた
行き交う人はみな顔見知りで
お帰りなさいと言ってくれる

時代遅れの優しさに
照れてしまって
ふと脇道を見遣れば
彼岸花が揺れていた




自由詩 田舎道 Copyright 落合朱美 2005-09-09 06:41:54
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