タップダンサーが うまれた
砂木



お風呂あがりに テレビをつけたら
タップダンサーの方が ゲストだった。
高校卒業後 渡米されて 自力で道を開かれたようだ。
タップのことなど わからなかったけれど
憧れのスターに 手紙をいただき 励まされた事など
良い話を聞かせていただき 思わずみていた。
そして タップダンスを披露された。
私は そのダンスをみて 衝撃を受けた。

最初 立っていると思ったが 違う。
踊り始めたら まるで かすかに浮いてるみたい。
パタ と 靴がついて音がする
あっ 音
音が うまれる
そんなふうに 思ったのは はじめてだった。
たんに ものを知らないだけかもしれないが
一音 一音が かすかに違う
すべて 二度ときこえない 
それでいて 連続した
この世界に うまれてはじめて の音 が
パタ パタ と おこるのだ。
力強く ないわけじゃなくて 踊ってないわけじゃなくて
タップするという行為は とても祈りとか捧げるとか
土着の産神の踊りのような
命が 形を持ちこの世に触れる ひとつひとつの音
それぞれの音 音の形はみえないけど 音という形

こんな出会いは ブーニンのショパン以来だ。
あの時も お風呂あがりに テレビをつけて ぼーとしてたら 
演奏が始まり ピアノの音が見える というような気がして
衝撃を受けたのであったが。

私は なんの素養もないので びっくりしただけかもしれないが
一音 一音 綺麗にだされるタップに 魅入ってしまった。
しかし 夜も遅かったため 名前もあらためず寝てしまった。
だけど 数日すぎても なんだか 心に残っている。
詩に といっても どう書いていいかわからない。
びっくりしたでは 褒め言葉にはならないかもしれない。
私の中に タップダンサーが うまれた夜であった。



未詩・独白 タップダンサーが うまれた Copyright 砂木 2005-09-04 14:02:33
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