夕方
石川和広

曇って
見えない夕陽を
さがしていると
さびしかった時間が
今と重なる

ひんやりとした母の顔
ギザギザにみえて
夕陽道を歩いている
学校の校庭は
黄色い砂漠
ひとり歩く
重い
思い
ランドセルをしょって

走らない
トイレに行きたいのだけど
逃げ道は四角い箱
の形をしていて
夕日が世界を
焼き尽す

友達は夢の中
誘ってくる子は
いたけれど
ひとりじりじりと
歩いている

昨日何食べたっけ
時々ふりかえる
昨日は
粘膜で包まれて

いつまでも
帰れない
あるはずの
ひんやりした玄関は
訪れなくて
拒んで
泣くことも選べずに

いつまでも
影から逃げながら
甘い手紙を待っていた

ひんやりした母の顔

飛行機山に落ちた


街路樹と白い通りを
自転車で走っている
そんなシーンに移行

僕は血が通っていた
透明で
流れる記憶の川を
逆らって
走った
走った
曲がっていく堤防
のゆるい坂道
仕事がない
永遠に
手ぶらなのか
橋の下に
人が生きている

青い世界の
粘膜の中を
生きるときが
今もある


自由詩 夕方 Copyright 石川和広 2005-08-30 18:38:54
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