発泡の夏
千波 一也

久しぶりに自転車をこいだ


思いのほか重くって 
にわかに
ふくらはぎが 
注意報

堪え 
堪えて 
焼鳥屋を目指す 
男ふたり



「とりあえずビール」

おまえは言って

とりあえず 
なんて
ビールに失礼だろ

思いつつ
ビールが飲めないオレは
ライム・ハイ



連絡が密な訳じゃないのに 
近況はすぐに
浸透してゆく

三日ぶりだったっけ、と 
少し酔う



制服だった頃と 
制服を脱いでまもない頃と
眩し過ぎる日々は
しっかり肌を
灼いていたらしい



ジョッキに広がる不可視の青空

ほの暗い照明が
小粋だった



会計を済ませて店の前

「これって酒気帯びだよな」

サドルにまたがる
胃は重くても
ニヤっと笑えば 
軽くなる


「しっかりこげよ」って
偉そうなおまえ

「らくしょうだね」って
偉そうなオレ


足とこころとをぎゅっと捕まえた 
幾度目かの夏



久しぶりに自転車をこいだ


爽快だった






自由詩 発泡の夏 Copyright 千波 一也 2005-08-30 03:46:38
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
【親愛なる者へ】