女体についてのオマージュ
芳賀梨花子

わたしの身体は三日月の野原です
このなだらかなカーブは
どのみち受け入れるための
情報を得る手段であり
触角のようなものです
屹立と振動が描く
幾重にも連なる波状のはしっこを
数千億もある毛穴を見開いて
探しているのです
三日月はやがて満ちて
野原にはやがて風が吹いて
その葉脈は潤い
朝露のような初々しい歓喜に
男は狂うのです
知ってはおりました
知ってはおりましたが
ここまで男を
深く愛したことはないので
わたしのひとつしかない瞳孔は
涙を流しながら
死と等しく開いております
覗き込めばそれは踊っております
女というものはそういうものなのです
たとえ三日月を鷲づかみされても
最後の一滴まで搾り出されても
枯れたりはいたしません
女というものはそういうものなのですから


自由詩 女体についてのオマージュ Copyright 芳賀梨花子 2005-08-29 21:53:20
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