献花
千波 一也

さくら かんざし
あかねの 鼻緒

ねむりの いわおに 
腰かけ
仰ぐ 


ちり ち り りん
金魚の尾ひれが 
風鈴を蹴る

ちり ち り りん
黄色の帯と 
左手 
うちわ


嗚呼、ごらん

濃紺の天辺に白糸が染み渡ってゆく


だいだい 
もえぎ  
あお孕む、朱


浴衣の 
うなじに 
けなげな上気

愛でることばの 
ひとつ ふたつが
ほろほろ 散りゆく 灯りを彩る


納涼の宵 
盆のさかずき 笛 神楽

納涼の宵
さやかなる川 走馬燈


彼岸に あげは が さらりと溶けた


焦げの けむりは 船出の薫り
銀河の巡りは かくも鮮やか


いちるの涙の流れに乗って 天へと昇るすべてのものへ

しずかのうみの 

その凪 
祈り




大輪の菊 

いちりん


捧ぐ







自由詩 献花 Copyright 千波 一也 2005-08-29 00:22:18
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