降る夢
千月 話子


桜降る あの 朱色に染まる門前で
逝き 生きと 別れたというのに
あなたは 私の夢の中で
「君の傍にいるよ」とか
「守ってあげるよ」とか 言うのです。


幸せだった一日の終わりに
あの 大きな虹の始まりで
祈り 別れたというのに
あなたは 私の夢の中で
名前を呼んだり 笑いかけたり
抱きしめて キスしたりするのです。


あなたを忘れました 君の名前を教えて
あなたを忘れました 君の住む町へ行くよ


いつまでも終わらない夢 いつまでも終わらないあなた


縁を たくさん残していったから
永遠に 私の瞼の内側で生きる あなた


目覚めた朝の涙は さらさら として
悲しいというより 幸福なので
薄桃に 染まりながら
「いじわるだね」と 上空へ笑うのです。



自由詩 降る夢 Copyright 千月 話子 2005-08-28 23:44:24
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