硝子工房
千波 一也


むらさきいろの透明グラスは
この指に
繊細な重みを
そっと教えており

うさぎのかたちの水色細工は
ちらり、と微笑み 
おやすみのふり


壁一面には
ランプの群れがお花のかたち
あの狭い部屋のなかでも
こんなふうに育つだろうか、と
腕を組む


フロアに匂うキャンドルの灯りは
しずかに
したたかに
この足を地上から浮き立たせて
「もうしばし」と
ときを盗んで 
たしかに燃やす



頬と 
髪と 
瞳と
なにいろにも染まり馴染んで

胸と 
耳と 
声と
かるくするどく
溶けてゆく



運河を渡る 風 一陣



人波の
おだやかな紅潮が
もうじき夕陽と
ぴたり
重なる




自由詩 硝子工房 Copyright 千波 一也 2005-08-27 02:10:13縦
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