忘れっぽい僕のために (即興)
窪ワタル

二つの海のことは 誰でもしっているはずなのだ

例外なく液体の飽和した皮膚の深部へ
浸透し 沈下し 腐臭となろう
腐臭は巡り 巡らせながら明滅している
素粒子の奥ではクオークが クオーク奥でも
明滅は休むことをしない

やがて心拍が止み 液体が消滅へと加速する時
腐臭は言葉をおもい出す
風と 土と あらゆる気体と液体との対話が
無神論の不滅を証明する

(ああ 科学と唯物論ののろまめ!)

ついに 孤独と セックスと 嘘と 空腹の正体を体現する 
 
(そう そうしてきたのだ ホモ・サピエンス!)


なのに僕は忘れっぽい
存在すると同じくらい奇跡的に

自転が続いているのは 僕をふるい落とすためではないのに
二つの海だけが枯れず
僕は ついうっかり 正義以外の色を欲しがらない
今日も森が焼かれ 街が焼かれ 本が焼かれ 子どもが焼かれ
海は荒あぶる理由を失っても荒ぶる
言葉は音となり 幻の津波の果てに
生まれることを 忘れるのだ

 


自由詩 忘れっぽい僕のために (即興) Copyright 窪ワタル 2005-08-22 17:18:48
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