書けない時には
石川和広

詩を書くこと
ばかり考えてる

谷川俊太郎のかげが
うしろにある
最近読んでいるのだ

こっそりと宇宙と
話した少年
または死について考える老人
詩人は少年と老人が同居する
と云ったのは誰だっけ

彼のデビューを飾ってくれた
お父さんが亡くなったとき
彼ははだかになって
詩を書いた
寒々しい雨の音が
詩集から
聞こえてきた

どんな気持だったんだろう
聞かずともさみしい少年の
無言の呟きが聞こえる

「世間知ラズ」は初めて買った詩集だった

僕のお父さんは
今僕の初めての詩集を
売りに走っている

僕のお父さんが
今死んだら
僕は生きてはいるだろうが
恐ろしい

彼とは違うが
僕も世間知らずだ
世間がなければ
詩もうまれない
詩はとびたつ大地を
失う
そう思わないか?

黒い鳥がとぶ
六階から
下の遊んでいる小学生
の声が聞こえてくる

おかしな話だ
生活より前に
詩はあるはずもない
と考えているのに

障害年金暮らしだ
払えない
今の政治だと
なくなりそうで
こわい

一ヶ月前までは書くのは
月一のペースだったのに

自分の馬鹿さ加減に
気付く前に
書くことを考えている頭がある

なんでこんなに
焦っているのだろう
煙草すう

詩が目的であっては
いけない

さっきからいけない
ばかり考えている

体を
生活をおいては
詩がついてこれない

詩はゆっくりなのか
詩は出てくるときに
出てくるのだろう

待てない
おじさんのくしゃみと
車のエンジン音が
聞こえてくる


暖機している
あたためている
そんなのもしらない

ねえ
まとめないよ


未詩・独白 書けない時には Copyright 石川和広 2005-08-21 18:16:43
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