手のひらの日
木立 悟




まとわりつく寒さと湿り気に
からだの花は目を覚ます
欠けた明るさ
まばらに降り
起伏の上にうすくひろがる


曲がり角に集まる闇へ
消えてゆくひとりの背の影を
あなたは海辺で見つめている
空の半分の雲
雲の半分の月
すすり泣く夜に映る
淡く静かな抱擁のかたち


白い鯨が抱きあいながら
抱きあう男女を呑みこむとき
互いのからだのあいだに生まれる 
氷山の色をくちずさむとき


自分より小さいものを大きいものを
作りも壊しもできる手を
蝶の群れに投げだして
あなたはあなたの鈴の実を
はじまりと終わりに置いてゆく


目を閉じてもまぶしい
あなたが触れる夜のかたち
夜から朝へ融けては離れる
ひとつひとつの指のかたち


水色の唄が
微笑むように金色になり
暗がりは暗がりのまま
小さな音の花にあふれる
今日は雨の日
今日は晴れの日
遠い渦にまたたき したたる
今日はあなたの手のひらの日








自由詩 手のひらの日 Copyright 木立 悟 2005-08-17 21:35:54
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