黙祷 三十秒思考
虹村 凌

「黙祷」
一瞬でざわめく声は途絶え
耳に煩い程の静寂に包まれる
この時を待っていたんだ

***

「しらかんば」
呟いた唇からは
ただただ灰色の煙が零れるだけだった
既に頭の半分
右手
左足
右脇腹を失い
尻尾は燃え尽きてしまった
力無く垂れ下がった日本刀は
輝きを失い
鈍い
灰色の光を
気怠そうに垂らせていた

***

黙祷
祈りを捧げる奴らの中に切り込む

***

御父様
御母様
生まれてきてごめんなさい
私は存在してしまったのです
気が違ってしまったのです
天皇陛下万歳
経済大国万歳
全ての霊魂に捧げる黙祷を
私は

***

黒服の森の中
私は諸手を挙げて死に給う
御父様
御母様
存在してしまってごめんなさい
私は此の國の政治家達を許す事が出来ませぬ
どうか我が無礼をお許し下さいませ
どうか先立つ我が人生をお許し下さいませ

失礼いたします


***

(何事も無い日常は果てが無く
 おそらくその名も知られはせぬ
 やがては話もされぬまま
 墓には苔が蒸すだろう

 咲く花もあれば咲かぬ花もある
 明日は我が身とくだをまく
 友の酒に眠る夜
 女子供もいないまま
 この世を変えてみせようぞと
 命令ひとつでやらいでか)

***




黙祷、止め






自由詩 黙祷 三十秒思考 Copyright 虹村 凌 2005-08-16 21:13:57縦
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