目覚め
なつ

ふいに
欠けた気持ちで目覚めた
三日月の朝


とんとん、と
階段を降りながら
わたしを満たしていた
はずの
あたたかい何かを
必死で思い出そうとする

思い出そうと
コーヒーから
目をそらす


食卓では
ヨーグルトに
鮮やかに煮つめたいちごが
一粒のっている
ほのかに染みわたる
ルビーの色
これが、心臓で
胸に手をあてれば

もう
酸っぱくなった記憶が
教えてくれる

夢のなかでは
失ったものを
もう一度失うことが
くせになるのだ、と


昼間の三日月は
新しい空気に触れ
やがて
溶けてしまうから

目覚めは
ひかりの下での逢瀬を
けして許してはくれない


自由詩 目覚め Copyright なつ 2005-08-03 21:34:22
notebook Home 戻る