浦島太郎ちゃん
みもる

薄暗い蛍光灯の光をあびて
シルバーのリングが色褪せている

長い年月
狭い部屋にひきこもっていて

時間を止めようとしたはずの僕が
いつの間にかとり残されている

友人はすでに家族をつくり
もう一人で会ってくれることはない

見たこともない鉄の塊が
猛スピードで行き来し
街は空を覆うほど大きくなった

僕は何もかも信じられなくて
何度も目をこする

太陽の下で
シルバーのリングはまぶしく
光っていた

色褪せたのは
指輪なんかじゃなく
僕の瞳のほう

湧き上がる涙が
わずかに
セピアの視界を導いて

今日から僕は
外に出よう

置き忘れた時間を
太陽と一緒に
探し出すために


自由詩 浦島太郎ちゃん Copyright みもる 2005-07-31 00:54:57
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