ホワイト&ホワイト&ホワイト
千月 話子


まず、最初に言っておくけどね。
冷凍室から取り出したばかりのアイスキャンディーを
すぐに舐めてはいけないよ ホワイト

表面を白く覆う 霜という物が消えてから
静かに舌で突っついてさ 甘いと感じたら
もう舐めてもいいんだよ かじってもいいんだよ

ホワイト 僕はまだ小さくて
危険信号が すぐ赤にならないものだから
毎年、夏の初めには
舌先を 熱くないのに火傷してさ
隣に住んでいる アメリカ人のジャスティンみたいに
肩をすくめて 赤い舌をペロッと出すのさ
もう、それくらい呆れて物も言えないらしいよ ホワイト


 さて、キミがその白いお腹を出して くねくね しているのは
 僕に甘えているばかりじゃないんだね
 例えば、カンカン照りの太陽に「参った!」という
 キミなりの ポーズみたいにね。


入道雲がどこからやって来て どうやって出来たか
なんていう事を知っているかい? ホワイト

それを教えてもらっても 僕の小さな頭の中は
プールの事や スイカの事や 花火の事で 一杯だから
毎年、絵日記を見ては 忘れた事を思い出すんだ
小さいけど家の細長い廊下で 側転して 側転してさ
目を回して やり過ごすんだ
もう、それくらい呆れ果てて 忘れたいらしいよ

ホワイト 聞いてよ。
入道雲が その名前みたいにニュ〜っと形を変えてさ
白い シロクマになったのは
今から たった5秒前くらいの出来事で
それからというもの 僕らが目を丸くして見入ってしまった
スーパー影絵劇団みたいに 青をバックに白い影が
ウサギになったり カメになったり 
トリになったり ネズミになったりして
最後には、大きな口を開けたオオカミのお腹の中へ
入ってしまった・・・というお話が完成していたんだ ホワイト


 さて、キミのその丸い頭をスリスリと5回撫でたのは
 可愛いから だけじゃないんだよ
 例えば、急に留守番を頼まれたりして 泣き出しそうなんだ
 だから「優しく、守ってよ。」
 という 僕なりのポーズみたいにね。


うとうと 過ごす緑の高原
そういえば、ホワイト キミの兄弟が
1キロ先の ドッグ・ランで待ってるよ
名前を教えてもらったけれど どれもこれも白だから
僕は呼ぶよ ホワイト&ホワイト&ホワイト
笑いながら 見た目涼しい夏の始まり






自由詩 ホワイト&ホワイト&ホワイト Copyright 千月 話子 2005-07-22 17:52:50縦
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