優しきあなたへ罪状を
千波 一也


悪気などないのだから
だから尚更
優しいあなたは嘘つきになる

誰をも騙せなくて
自分を騙すことではじめて嘘つきになる


それがたとえ取り繕いの仮面であっても
優しいあなたは
そういうふうに嘘つきになる


けれどもやはり安手の仮面ゆえ
途ゆく人は
あなたの背後を確かめる

優しいあなたは自分しか騙せないものだから
途ゆく人に嘘を手渡す
優しく手渡す



優しきあなたよ

振り返る途に
いくつの涙が見えるだろうか
振り返る途に
いくつの掌が見えるだろうか



判決、

その優しき光の源を
絶やさぬように抱くこと


判決、

すべての温かさの懐に
優しき寝息を立てること




自由詩 優しきあなたへ罪状を Copyright 千波 一也 2005-07-13 05:42:51
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
【親愛なる者へ】