偏食 二
落合朱美

次に私が拾った獏は
これはもう生まれついての
野良獏だったから
やっぱり夢は食べなくて

好んで食べたのは・・・嘘

あぁ 私はどうしたらいいのかしら
せっかくイイヒトで通してきたのに
今度はウソツキになれというの
思わず天を仰いだ私

だけど可愛い獏のため
私はウソツキになってみた
そしたらこれが意外に簡単
イイヒトであることと
ウソツキであることは
実は背中合わせの紙一重

私はイイヒトになりすまし
人々の秘密を片っ端から聞いてやり
心にもないお世辞を口走り
もっともらしい助言などをしてあげる
時にはありもしない身の上話をでっちあげ
人の笑いや涙を誘ってみる

夜になると私は
2匹の獏と向き合って
集めてきた秘密と
吐いた嘘をぶちまける
2匹の獏はそれはもう嬉しそうに
つぶらな瞳をキラキラさせて
はふはふ言いながら食べる食べる

秘密も嘘もすっからかんになってしまうと
私は自分がわからなくなる
私はイイヒトでウソツキなのかしら
イイヒトだけどウソツキなのかしら
ウソツキだけどイイヒトなのかしら

このところ私はすこし危ういのじゃないかしら

だけど足元で2匹の獏が満足げに
寄り添って眠っている姿を見て
獏も夢を見るものかしら なんて思いながら
私もひどく満たされていることに気付いて
これでいいのよ と言い聞かせ
これでいいのよ とほんとに思い

そうして私は幸せな眠りへと堕ちてゆく



自由詩 偏食 二 Copyright 落合朱美 2005-07-08 23:25:56縦
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