記憶の断片小説・ロードムービー「卒業」
虹村 凌

まえがき

これは実際にあった話であり、自分自身のエッセイである。
記憶に頼る部分が大きい為、話が大きく前後したりするだろうが、ご容赦願いたい。
登場人物の名前は本名を使う事を避けた。団体名なども変更している。
地名はそのままで使う。特に意味は無い。
ただ、この登場人物とは、あまり良い関係とは言えない為、本名を使う事を避ける。
彼らは俺の作品をいくつか読んでいるようだ。
と言う事は、これも読む事になるであろう。知っているであろう。
彼らから苦情が来たりした場合、一切を打ちきって、削除する予定だ。

この記憶小説は、単なるいちエッセイであり、話でしかない。
ただ、「その時」に、何時か俺がこの話しを書く…と言った事を思い出し、
いま、こうして書いているに過ぎない。
Y、A。もし不満があるなら教えてくれ。
Pack-of-damn@ezweb.ne.jp









「第一ニューロン:真夏の三鷹」

みんみんみんみんみんみんみんみん

 油蝉が、全ての声に濁音を付けて鳴いているように聞こえる。
クソ暑い真夏の日に、俺は友人の個展に出かけた。
三鷹のアートスペースでやっていると言い、招待状を貰ったのだ。
招待状と言っても、手製の絵を乗せた葉書なのだが…。

裏に記載された地図を見ながら、木陰の下を意識して歩く。
それでも汗が噴き出る。袖で汗を拭いながら、煙草に火をつけた。
バニラの香りが広がる。ブラックストーンを一口ふかす。
「何処だ…」
 俺は迷っていた。地図を見てもわからない。
三鷹駅と河合塾を2往復したが、何処かわからない。
俺がどの地点にいるかわからない。
2往復半して、三鷹駅に向かった時、友人の姿を見つけた。
 ひょろひょろとした体型、このクソ暑いのに長袖、長い髪。
見間違える筈が無い。池上 庵だ。俺は走って庵に近づいた。


 彼のスペースは冷房が効いていて、とても涼しかった。
既に絵の展示はされていて、あとは装飾をするだけだ、と庵は言った。
包帯と絆創膏を、壁に貼ったり引っかけたり。素敵な空間だった。
庵は、背が高い癖に、少し異常なまでに細いヤツで、
毎年春の健康診断で、「栄養失調気味」と言われて傷ついているヤツだ。
別段、喰わない訳じゃない。飯は人並みに喰うし、甘いモノも好きだ。
きっと、庵が生きるために使うエネルギーが多い所為だろう…と俺は思う。
 二人で少し喋っていると、嘉人が来た。
俺と庵の同級生だが、庵の方が付き合いが長い。俺はここ数ヶ月の付き合いでしかない。
 しかし、趣味は合うようで、学校の授業中に年中喋っている仲間だ。
そんな訳で、3人でしばらくキャッキャ言って戯れていたところ、
誰が言い出したのか、吉祥寺で茶でも飲もうと言う事になった。
丁度、嘉人の彼女が来ると言う事で、俺たち三人も出かけたのである。

 外は、相変わらずクソ暑い。


散文(批評随筆小説等) 記憶の断片小説・ロードムービー「卒業」 Copyright 虹村 凌 2005-07-07 22:19:54
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