花模様スケッチ
千月 話子



色画用紙に一日の花を描くよに



夏服の少女の贅沢なアトリエは
少し柔らかなメイプルの
敷き詰められた木床の上で
重なるパウダービーズのクッションが
転がる足先まで受け止めた


    花弁

まるで 憧れの赤いドレス
ペチコート ペチコート
膨らんだ四重奏へふわり落ちて
広がる花びら
外側から淡く揺れて
跳ね上がるハチミツ色のカールした髪
花心になる彼女の膝から、くの字に眠る



    茎・葉

開かれた日曜の窓から
リコーダーの「プ」の音が
風に連れられ、やって来た 
ウスバカゲロウ乗せて

    
生まれて一日目のウ
二日目のス 三日目のバ・・・
音が外れてスの音がくすぐったいと
羽根を広げた葉脈が、かすかに震える
七日目のウは もう飛び疲れて
眠る彼女の足先で眠る
茎の根元になって
わずか七日間の広い空を抱きしめ眠る



    飾り花

チョコレートにサイダー
傍らから シャンパーニュの少女
甘すぎて喉元から歌う
裏声の白い花のワルツ
発酵する葡萄ジュースから上昇した
子供の甘い香りだけ残して


はじける泡の可憐な粒
手のひらに握って
眠る彼女の指先で眠る
繰り返す夢の継ぎ目で
開かれる度 生まれる
カスミソウのまばらなバランスで



    花瓶へ

 眠っているの  起こさないで

敷き詰められた木床の上で
やがて生まれる 少女の絵画


低空で飛ぶ 蝶の微風添えて
爪先立ちで遊ぶ 花のワルツ





自由詩 花模様スケッチ Copyright 千月 話子 2005-06-19 16:54:26
notebook Home 戻る  過去 未来