白鳥麗子でございます
虹村 凌

きぃぃぃぃぃん…
「こんにちは、白鳥麗子でございます」
着信音が、乾いた教室の空気を破る
ぬるり、ぬるりと視線が集まる
立ち上がってしまった僕は
出来るだけ視線を引きつけて
円周率を三十桁まで答えて席に着いた


人生の階段を踏みしめるように上りながら
耳では人生を転げ落ちたような話の歌を
来る日も来る日も大きな音で聴いている
絶望して、世の中に見捨てられて、街に弾かれる
それがどんな感覚なのかわからないけれど
わかった事にしておく事が近づく道


トレモロする指が静かに息づく肌の上をなぞる
くるり、くるりと乳首の上を這って
下腹部へと近づいてゆく
ことり、と心が出尽くす音がする
ブラジャーは外れちゃったんじゃなくて
外してしまったのだ


色んな事に意味を見つけだそうとして
好奇心旺盛な
ふわり、ふわり、煙草を燻らせて
ころり、ころり、笑い声が回る




再び、着信音が、乾いた喫茶店の空気を破る
目と目が合って、

くすり、くすり






自由詩 白鳥麗子でございます Copyright 虹村 凌 2005-06-17 23:32:21
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「うにいくら丼」