畑の匂い
佐々宝砂

赤らんでゆくトマト、
緑に染まってゆくピーマン。
畑のトマトはトマトくさい、
畑のピーマンはピーマンくさい。
八百屋で買ったピーマンを台所で切る、
ピーマンの匂いがしない。
当たり前かもしれないし、
当たり前ではないかもしれない。

わたしは畑に生ゴミを撒く、
それから生ゴミの上に灰を撒く。
そうすると生ゴミが匂わないと教えてくれたのは、
死んだおじいさんだ。
おじいさんは煙草とお茶の匂いをさせていた。

生ゴミと灰と、
ピーマンとトマトと、
雑草と、
いろいろ混じって、
畑は畑の匂い。

わたしはわたしの匂いがするかしら。
嗅いでみる。
くんくん。
わからない。
わたしは畑で採れたのかしら、
それとも?


自由詩 畑の匂い Copyright 佐々宝砂 2005-06-17 01:57:41
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