パプリカ
みい

自転車のペダル踏み、学校を出てすぐに
いつもの、知らないおじさんに携帯で写真を撮られる
足下には、夕焼けが落ちてきて
ああ
影がもしもこのままなくなれば
世界は終わるのではないかと
思いながら

食卓にて、

死んでも可愛い魚に嫉妬しながら
ちゃんとその目を見て、いただきます。

目はつぶらで、口は少し開いていて、
授業中にあの人とキスしたいと思うのと一緒のところで
なんか気になるあたしはきっと
人間で言えばやっぱり、あなたが好きですと
言いたい、言いたい、
言いたいよう

だだをこねながら
食べる可愛い魚は暗澹の味がして
どうにも参る

たとえば、このサラダに入ってる
パプリカみたいな女の子になれたらどうだ
あたしはこれを、
夕焼けよりもきれいなものだと思いながら
人さし指でつまみ
食べる

今日、
いつものおじさんに、こら、と言ってみたら
こんにちは、と返ってきた
ナイフ飛んできた?
みたいに衝撃の挨拶に首を横に振って

いいえ、
あたしはあの人に殺されるまで死ぬ事ができないのです。
と答える

柔らかい朝を目の前にして

あの
パプリカみたいな感触の夢を見た。
少しだけ間違ったように、
指まで食べてしまいたかった。


自由詩 パプリカ Copyright みい 2005-06-13 17:20:43
notebook Home 戻る  過去 未来