都市伝説
いとう


知らない足音がわたしたちを追い越し
立ち止まっていることに気づく
群れるものたちのすべてが
居場所を持っているように見えて
小さな声でいることに
少しだけ疲れて

彩られた樹木たちは喧騒を映すけれど
あの中にわたしたちはいない
うつむいて、手をつなぐと
どこかで汽笛が鳴って
夜の闇に
薄く迷う

あなたの周りで死にゆくものが
あなたに何も告げないのは
あなたのために
死ぬのではないから
つながれた手と、手の、隙間から
飛び立つものを拒絶する夜
わたしたちは静かに崩れ
揺れ動くことさえふいに
見捨てられたように
震えているのは
わたしではなくあなただ
わたしではなく
あなたが震えているのだ

細やかなダイオードの束が
区切られた領域で明滅し
結びついた手と、手に、
一本の線を引く
すべてのわたしたちは意味をなくし
わたしとわたしではないあなた
そのような
嘘が
互いの咽元で豊潤に震え
闇に溶け込んだ
わたしとあなたの数だけ
汽笛となって増殖する

あの汽車は
夜になると動き出し
死にゆくものの前で
汽笛を鳴らす
葬送のための手と、手を、
ぎこちなくつなぎながら
わたしもあなたも
生きていないことに
まだ
気づいていない
ふりをしている



自由詩 都市伝説 Copyright いとう 2005-06-07 17:51:39
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