甘い廃屋
ヤギ

住人はとうにいなくなったらしい
不思議ときれいだ
レースのカーテンが風にふくらむ
明るいキッチンの
テーブルの上に 氷ざとうがある
グレープフルーツくらい大きい


甘い


いつでも食べられたはずだが
食べた覚えはない

静かだ
葉が風にそよぐ
おそらく夏だ
日差が暖かい
目を閉じる
風に包まれて


私は


氷ざとうを持ったまま

懐かしい
笑って過ごしていた
窓辺に立てば空は
きっと青い


甘い
なめるたびに


支えられない
もう 落とすだろう



甘い
氷ざとう




自由詩 甘い廃屋 Copyright ヤギ 2005-06-03 14:39:02縦
notebook Home 戻る  過去 未来