下がる
ヤギ

この世は河であると教える坊主を川へ叩き込んでやったら
喜んで魚になったので悲鳴を上げて倒れた僕は
いつの間にか全身にバターを塗られ
毛並みのいいマルチーズが耳打ちする

「それは百年金縛りだ 解く方法はある ゾウリムシになっても良いのなら」

すっこんでろと怒鳴るつもりが
声は喉の下でウンウン鳴るばかりで
ちょうど今際いまわ戯言たわごとか壊れた目覚まし時計のベルに聞こえたらしく
老いた花売りは僕の体中の穴という穴に手持ちの花を突っこんで手を合わせ
通りすがる者は窒息するほど笑った後
辺り一面を真っ黒に埋め尽くしたカラスの群れはいっせいにつうつうと涙を流したのに
それは天気雨が眼に入ってこぼれているだけだったものだから


自由詩 下がる Copyright ヤギ 2005-05-31 01:45:03
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